共同利用・共同研究拠点

主な共同研究成果

乳がんにおいてPI3 kinaseはRacタンパクのGDP-GTP交換因子であるP-Rex1を介しMEK/ERKシグナルを制御する

PI3K regulates MEK/ERK signaling in breast cancer via the Rac-GEF, P-Rex1.
共同研究者

ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院がんセンター Jeffrey Engelman 金沢大学がん進展制御研究所 衣斐寛倫、矢野聖二

発表論文

Proc Natl Acad Sci USA. 110:21124-9, 2013.

著者

Ebi H, Costa C, Faber AC, Nishtala M, Kotani H, Juric D, Della Pelle P, Song Y, Yano S, Mino-Kenudson M, Benes CH, Engelman JA.

要 旨

PI3Kシグナルはがん細胞の増殖、生存に関わっており、現在多くのPI3K阻害剤が臨床試験中である。これらの早期臨床試験の結果やin vitroでの検討から、PIK3CA変異もしくはHER2の遺伝子増幅を有する乳がんにおいてPI3K阻害薬の有効性が示唆されているが、その機序は明らかではなかった。本研究ではoncogene addictionを示すがん細胞では分子標的薬がPI3Kシグナルに加えMEK/ERKシグナルも抑制する事実があることから、これらの乳がんにおける両シグナルの相互作用を検討した。その結果、乳がん細胞株ではPI3K阻害薬がP-Rex1-Racタンパクを介してMEK/ERKシグナルの抑制を来すことを明らかにした。P-Rex1の発現は、PIK3CA遺伝子変異やHER2遺伝子増幅を有する乳がん細胞株においてPI3K阻害薬の感受性と相関しており、乳がんにおけるPI3K阻害薬の感受性予測にP-Rex1の発現が使用できる可能性が示唆された。


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P-Rex1を介したPI3KシグナルによるMEK/ERKシグナルの制御機構 PI3Kはレセプター型受容体により 活性化され下流のAKTシグナルを活性化する。一方で、乳がん細胞ではPI3KがP-Rex1-Racを介してCRAFを活性化することでMEK-ERKシグナルの活性化にも関わっている。両シグナルの抑制は細胞死をもたらすことから、P-Rexを発現する乳がんにおいてはPI3K阻害薬が単独で奏効する。 (PNAS 110:21124-9, 2013より)