がん研究早期体験プログラム

金沢大学がん進展制御研究所

WPIナノ生命科学研究所

がん研究早期体験プログラム

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お知らせ

がんの脅威に立ち向かえ!

 がんは、2人に1人が患い、3人に1人の死因となる、人類最大の脅威です。人類は古代よりこの深刻な病気に立ち向かってきました。しかし、なぜ、正常な細胞ががん化するのか、がん細胞を殺すにはどうすればよいのか、まだまだわからないことばかりです。今後も多くの若い優秀な人材がこの研究に参加して、難題に取り組まなければ、がんの研究を発展させ、未来の医療を切り拓くことはできません。この度、金沢大学がん進展制御研究所では、WPIナノ生命科学研究所と共同で、 高校生を対象とした「がん研究早期体験プログラム(がん研究 Early Exposure Program)」を企画致しました。高校生に実際の研究の現場に足を運んでもらい、現役の研究者から研究内容やその意義に関する説明を受け、実験を見学・体験することを通して、がん研究に興味を持ってもらうプロジェクトです。本事業は、クラウドファンディング(2021年)により募った支援金、「和田哲(さとし)がん基金」、「未来のがん研究者を育てる基金」などを基に、高校生が、アカデミア・医療・産業界において活躍する研究者を志し、将来、がんの克服に貢献する人材へと育つことを応援する人材育成プロジェクトです。

循環図

実施内容

1.研究体験プログラム:研究現場を体感する

概要

開催日 : 2023年8月1日(火)~3日(木) 11:00~17:00(予定)
場所 : 金沢大学(角間キャンパス)がん進展制御研究所およびナノ生命科学研究所内 各研究室
対象 : 研究に興味がある高校生(主に、本事業に協力いただける高校を通じて対象者を募集します)

内容

生物が生まれ、死んでいくまで。その間、細胞内では、遺伝子、代謝物、タンパク質、細胞小器官の構造や機能が、常にダイナミックに変化しています。これはナノスケール(10億分の1メートル程度)での生命現象です。
もう少し視野を広げてみると、細胞同士のシグナルのやり取り、さらには脳と肝臓のように異なる臓器の間で生じるコミュニケーションもまた、大事な役割を果たしていることがわかります。
ヒトのがん細胞が遠く離れた臓器へ転移すること(遠隔転移)は、まさに、メートル単位で生じる生命現象です。このように、生命やがんを本当に理解するためには、様々なスケール(マルチスケール)での解析が必要です。

研究者が専門について概要説明を行い、実験体験をサポートします。

体験日 テーマ 担当教員
8月1日 1.胃がん・大腸がんをモデルで再現!
~がんの発生メカニズムを知ろう~
がん進展制御研究所 大島正伸
2.「がん」の幹細胞の集団をみてみよう! がん進展制御研究所 後藤典子
3.タンパク質の働く姿をリアルタイムで観察しよう!
~ゲノム編集の瞬間を可視化する~
ナノ生命科学研究所 柴田幹大
8月2日 4.細胞のトランスフォーメーションを観る・測る がん進展制御研究所 髙橋智聡
5.100万個の中のたった1個!幹細胞を集めてみよう!
~血液細胞が生まれる過程を再現する~
がん進展制御研究所 平尾敦
6.がん細胞のシグナルを蛍光イメージングで可視化する がん進展制御研究所 平田英周
7.構造変化したタンパク質の姿と動きを見てみよう!
〜タンパク質ミスフォールディング〜
ナノ生命科学研究所 中山隆宏
8月3日 8.がんはどのようにして転移するのか?
~がん転移の初期に起きるがん細胞の変化を観察する~
がん進展制御研究所 鈴木健之
9.プログラム細胞死を観察しよう がん進展制御研究所 須田貴司
10.百聞は一見に如かず!
~光を使ったイメージングで細胞の中を覗いてみよう~
ナノ生命科学研究所 新井敏
11.世界最先端!生きた細胞の表面をなぞる
走査型プローブ顕微鏡とは
ナノ生命科学研究所 渡邉信嗣

*詳細な内容は各テーマをクリックしてご覧ください。

2.セミナー:がん研EEP 授業編『生命科学の最先端と未来』

概要

日時:2023年8月4日(金) 午後
場所:金沢大学(角間キャンパス)ナノ生命科学研究所
4階 Nano LSI Main Conference Room
参加者:30人程度・対面(オンライン配信あり)

第一部:研究者のキャリアデザイン ~こうして私は研究者になった~

(1)平田英周(がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所・准教授):医学部出身
(2)佐藤華江(ナノ生命科学研究所・特任准教授):理学部出身
(3)宮成悠介(ナノ生命科学研究所・准教授):薬学部出身

休憩(交流・個別質問、写真撮影)

第二部:生命の仕組みを解く、病気を知る、そして医療応用へ

(1)前田大地(医薬保健研究域・医学系・分子細胞病理学・教授)
顕微鏡で病気を見る!『病理学』の最先端
(2)松本邦夫(がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所・教授)
細胞増殖因子 〜志のきっかけとバイオ創薬〜

がん研EEP2023

高校生の皆さんへ

こんにちは、金沢大学がん進展制御研究所です

私たちの研究所は、その名の通り、がんの研究所です。がんの薬剤耐性や転移について、日夜研究をしています。特に「先進的がんモデル」「がん幹細胞」「がん微小環境」「分子標的治療」に関して先導的な研究を進めており、その成果は科学雑誌Natureをはじめとする数々の著名な学術雑誌で発表されています。

ナノ生命科学研究所は、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)等の特殊な顕微鏡を世界に先駆けて開発した研究所です。ナノスケール(10億分の1メートル程度)の細胞内タンパク質、代謝物、細胞小器官の観察を通じ、生命現象の本質を捉える研究をしています。またその技術を応用し、がんの動態解明にも取り組んでいます。

今回企画したプログラム、がん研EEPは、このふたつの研究所で日頃から取り組んでいる研究対象を題材として行うものです。高校生の皆さんに、世界最先端の研究環境で、実際の研究の現場を体験してもらい、将来、皆さんが研究に携わること、そして、がんの克服に貢献することを応援します。

このプロジェクトを立ち上げたきっかけは、 研究所に「学びたい」と訪れた高校生です

ある年の夏、医学部進学を志望する高校生の二人組が、研究所を訪れました。神経科学と脳腫瘍の研究に興味を持っているという彼らは、私たちにこう問いました。
「どうしたら将来医学研究者になれるのか?」
「高校生の今、自分たちにできることは?」
相談を受けた教員は、自身の経験を踏まえて、幅広く生命科学を学ぶこと、大学ではできるだけ早く研究室の門を叩くことなどをアドバイスしました。また研究室を案内し、がん研究者がどのような毎日を過ごしているか話しました。

他にもポツポツと、研究所を訪ねてくる高校生がいます。ある高校生の女子生徒は、こんな希望をもってやってきました。「学生実習で実施しているような、予想した結果が得られる実験ではなく、普段、研究室で行われているような、本当に新しいことを見つけるための実験を体験したい」。彼女は受け入れ教員と相談し、冬休みの5日間で実験を行い、その結果を高校生国際シンポジウムで発表したということでした。そして、こう言ったそうです。
「実際の研究の現場を体験することができて、とても有意義だった。進路は、米国の大学への進学(生物学と物理学のダブルメジャー)を第一希望に考えている。入学選抜の際には、この研究体験と国際シンポジウムでの発表をアピールしたい」

今の高校生は私たちが思っているより遥かに意識が高く、自分自身の未来を「世界」の中で捉えているようです。学ぶことへの貪欲さと飽くなき好奇心には、無限の可能性を感じます。
そんな彼らの可能性を引き出したい。強い意志と優れた頭脳を持つ彼らの未来を、微力ながらサポートしたい。その思いが、このプロジェクトを立ち上げるきっかけとなりました。

科学研究の世界には測り知れないポテンシャルがあります。とことん考え抜く楽しさ、知る楽しさ、そして人の役に立つ楽しさもあります。今回のプロジェクトは、若い世代がこうした楽しさに触れ、研究の世界の素晴らしさを知り、将来を考えるきっかけとなればと思い企画しました。

今年もやります、がん研EEP2023!

第一回となった昨年、大勢の大変優秀な高校生の皆さんを研究所に受け入れることができました。本学附属高校がとりまとめとなり本事業に協力いただいている高校の生徒さん、さらに一部、県外そして海外にお住まいの方にも参加いただきました。参加した高校生の皆さんからは、本プログラムを通して「高校では出来ない体験が出来た」、「研究の大切さを感じた」、「自分も新しいことを見つけたい」などの声が聞かれ、興奮した様子が見て取れました。一方、対応する教員からも「筋のいい質問がたくさんあった」「顕微鏡を見る度に、おーっと声が上がっていて本当に反応がよかった」という感想がでるなど、お互いによい刺激になりました。たとえわずかな時間であっても、研究体験をベースとした「高校生とプロの研究者のやりとり」が、明るい未来を創る原動力になるのではないかと感じさせられるほど、充実したプログラムとなりました。

2回目となる今回、関係者一同、益々魅力的なプログラムにしたいと意気込んでいます。昨年は、初回ということもあり不具合や改善すべき点も見受けられました。そのため、プログラム終了後、参加者からいただいたアンケート結果の解析や担当教員や高校の先生方との意見交換を経て準備を進めてきました。今回も昨年に負けず劣らず、充実したプログラムにしたいと思います。ホームページをみて、このプログラムに興味を持たれた高校生の皆さん、是非、実際に体験してください!我々も皆さんに研究のわくわく感を伝えられるようしっかり準備してお待ちしています。どうぞよろしくお願いいたします。

がん研EEP2023 実行委員長 平尾敦

過去の開催概要 『がん研EEPダイジェスト』2022年(第一回)

1.がん研EEP 体験プログラム(2022年8月1日~4日)

体験日 テーマ 担当教員
8月1日 1.DNAやヌクレオソームの観察 ナノ生命科学研究所 角野歩
2.100万個の中のたった1個!幹細胞を集めてみよう! がん進展制御研究所 平尾敦
3.プログラム細胞死を観察しよう がん進展制御研究所 須田貴司
8月2日 4.百聞は一見に如かず!
~バイオイメージングで細胞の中を覗いてみよう~
ナノ生命科学研究所 新井敏
5.探せ!がんの1塩基変異 がん進展制御研究所 松本邦夫
6.胃がん・大腸がんをモデルで再現! がん進展制御研究所 大島正伸
8月3日 7.構造変化したタンパク質の姿と動きを見てみよう! ナノ生命科学研究所 中山隆宏
8.「がん」の幹細胞の集団をみてみよう がん進展制御研究所 後藤典子
9.がん細胞のシグナルを蛍光イメージングで可視化する がん進展制御研究所 平田英周
8月4日 10.世界最先端!生きた細胞の表面をなぞる走査型プローブ顕微鏡とは ナノ生命科学研究所 渡辺信嗣
11.がんはどのようにして転移するのか? がん進展制御研究所 鈴木健之

2.がん研EEP 授業編『生命科学・医学研究の最先端と未来』(2022年8月5日)

1限目「がんの転移・治療薬耐性のリアル!~症例検討会にようこそ~」

金沢大学医薬保健研究域医学系/がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所・矢野聖二

2限目「原子間力顕微鏡が切り拓くナノ生命科学」

金沢大学ナノ生命科学研究所・柴田幹大

3限目「AI・ビッグデータが拓く医療の未来」

京都大学大学院医学研究科/ 理化学研究所計算科学研究センター・奥野恭史

*詳細は『がん研EEP2022報告書』をご覧ください(下記表紙画像をクリック)。

がん研EEP2022報告書

運用ポリシーおよび免責事項:本プログラムは、研究所が主体で進めるものであり、その実行にあたり、特定の企業、団体、個人から過度に影響を受けたり、不当に便宜供与を図るなどの不適切な事象が生じないよう細心の注意を払うことを運用ポリシーとし、ご協力いただく外部の団体・個人・企業の方にも、このポリシーを遵守いただくこととします。また、本運用ポリシーに則り、プログラムの運営や会計が適切に行われているか、定期的な監査を実施し検証します。なお、プログラムに関与する企業、団体、個人の本ポリシーから逸脱した行為によって生じるトラブルや損害に掛かる責任は負い兼ねます。