第2回(2023年度)開催概要
『がん研EEPダイジェスト』2023年(第二回)
1.研究体験プログラム:研究現場を体感する
概要
開催日 | 2023年8月1日(火)~3日(木) 11:00~17:00(予定) |
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場所 | 金沢大学(角間キャンパス)がん進展制御研究所 および ナノ生命科学研究所内 各研究室 |
対象 | 研究に興味がある高校生(主に、本事業に協力いただける高校を通じて対象者を募集します) |
内容
生物が生まれ、死んでいくまで。その間、細胞内では、遺伝子、代謝物、タンパク質、細胞小器官の構造や機能が、常にダイナミックに変化しています。これはナノスケール(10億分の1メートル程度)での生命現象です。
もう少し視野を広げてみると、細胞同士のシグナルのやり取り、さらには脳と肝臓のように異なる臓器の間で生じるコミュニケーションもまた、大事な役割を果たしていることがわかります。
ヒトのがん細胞が遠く離れた臓器へ転移すること(遠隔転移)は、まさに、メートル単位で生じる生命現象です。このように、生命やがんを本当に理解するためには、様々なスケール(マルチスケール)での解析が必要です。
研究者が専門について概要説明を行い、実験体験をサポートします。
体験日 | テーマ | 担当教員 |
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8月1日 | 1.胃がん・大腸がんをモデルで再現! ~がんの発生メカニズムを知ろう~ |
がん進展制御研究所 大島正伸 |
2.「がん」の幹細胞の集団をみてみよう! | がん進展制御研究所 後藤典子 | |
3.タンパク質の働く姿をリアルタイムで観察しよう! ~ゲノム編集の瞬間を可視化する~ |
ナノ生命科学研究所 柴田幹大 | |
8月2日 | 4.細胞のトランスフォーメーションを観る・測る | がん進展制御研究所 髙橋智聡 |
5.100万個の中のたった1個!幹細胞を集めてみよう! ~血液細胞が生まれる過程を再現する~ |
がん進展制御研究所 平尾敦 | |
6.がん細胞のシグナルを蛍光イメージングで可視化する | がん進展制御研究所 平田英周 | |
7.構造変化したタンパク質の姿と動きを見てみよう! 〜タンパク質ミスフォールディング〜 |
ナノ生命科学研究所 中山隆宏 | |
8月3日 | 8.がんはどのようにして転移するのか? ~がん転移の初期に起きるがん細胞の変化を観察する~ |
がん進展制御研究所 鈴木健之 |
9.プログラム細胞死を観察しよう | がん進展制御研究所 須田貴司 | |
10.百聞は一見に如かず! ~光を使ったイメージングで細胞の中を覗いてみよう~ |
ナノ生命科学研究所 新井敏 | |
11.世界最先端!生きた細胞の表面をなぞる 走査型プローブ顕微鏡とは |
ナノ生命科学研究所 渡邉信嗣 |
詳細な内容は各テーマをクリックしてご覧ください。
2.セミナー:がん研EEP 授業編『生命科学の最先端と未来』
概要
日時 | 2023年8月4日(金) 13:20~16:50 |
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場所 | 金沢大学(角間キャンパス)ナノ生命科学研究所 4階 Nano LSI Main Conference Room |
参加者 | 30人程度・対面(オンライン配信あり) |
第一部:研究者のキャリアデザイン ~こうして私は研究者になった~
13:30~14:45
この講演会では、研究所に所属する3名の研究者の方に、自身のキャリアパスを選ぶに至った経緯について紹介いただきます。大学進学や大学院での経験、研究者としてのキャリアを築くための工夫、将来の夢など、自由にお話いただきます。
(1)平田英周(がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所・准教授):医学部出身
(2)佐藤華江(ナノ生命科学研究所・特任准教授):理学部出身
(3)宮成悠介(ナノ生命科学研究所・准教授):薬学部出身
平田英周
(ひらた えいしゅう)
佐藤華江
(さとう はなえ)
宮成悠介
(みやなり ゆうすけ)
14:45~15:30 休憩(交流・個別質問、写真撮影)
第二部:生命の仕組みを解く、病気を知る、そして医療応用へ
15:30~16:50
(1)『顕微鏡で病気を見る!『病理学』の最先端』
前田大地(まえだ だいち)
金沢大学 医薬保健研究域・医学系・分子細胞病理学・教授
皆さんは、癌を含む多くの病気の診断が、顕微鏡で観察した際の「見た目」で決められていることを知っていますか? 顕微鏡と言われると、理科の授業で植物や動物のプレパラートを見たことを思い出す人が多いかと思います。そうです、あれです。実際に病院では、患者さんの病気の部分から作成したプレパラートを病理医が見て、「こいつらは悪い(=癌だ)!」などと呟きながら診断をしています。1枚のプレパラートの中には何万個もの細胞が存在し、顕微鏡で見れば、それらの種類や形の違い、くっつき方、広がり方が一目瞭然です。今回は、ミクロの世界から得られる情報をもとに病気の成り立ちを考える『病理学』の最先端を紹介したいと思います。
(2)『細胞増殖因子 〜志のきっかけとバイオ創薬〜』
松本邦夫(まつもと くにお)
金沢大学 がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所・教授
皮膚の擦り傷・切傷や骨折に代表されるように、私たちの体は多かれ少なかれ自然治癒力ともいえる再生・修復力をもっています。ごく微量ながらも、強い生物活性を介して生体の再生・修復を担う生体物質が、「細胞増殖因子」と呼ばれる生理活性タンパク質です。私は理学系研究科(生物化学専攻)を修了した研究者で、細胞増殖因子の研究をしています。2001年に、大学の教員を務めながら、細胞増殖因子が病気の治療につながることを夢見て、創薬バイオベンチャーを起業しました。研究者であっても、あるいは研究者だからこそ、病気の診断や治療薬の開発を介して人に役立つことができます。
高校生の皆さんへ
今年もやります、がん研EEP2023!
第一回となった昨年、大勢の大変優秀な高校生の皆さんを研究所に受け入れることができました。本学附属高校がとりまとめとなり本事業に協力いただいている高校の生徒さん、さらに一部、県外そして海外にお住まいの方にも参加いただきました。参加した高校生の皆さんからは、本プログラムを通して「高校では出来ない体験が出来た」、「研究の大切さを感じた」、「自分も新しいことを見つけたい」などの声が聞かれ、興奮した様子が見て取れました。一方、対応する教員からも「筋のいい質問がたくさんあった」「顕微鏡を見る度に、おーっと声が上がっていて本当に反応がよかった」という感想がでるなど、お互いによい刺激になりました。たとえわずかな時間であっても、研究体験をベースとした「高校生とプロの研究者のやりとり」が、明るい未来を創る原動力になるのではないかと感じさせられるほど、充実したプログラムとなりました。
2回目となる今回、関係者一同、益々魅力的なプログラムにしたいと意気込んでいます。昨年は、初回ということもあり不具合や改善すべき点も見受けられました。そのため、プログラム終了後、参加者からいただいたアンケート結果の解析や担当教員や高校の先生方との意見交換を経て準備を進めてきました。今回も昨年に負けず劣らず、充実したプログラムにしたいと思います。ホームページをみて、このプログラムに興味を持たれた高校生の皆さん、是非、実際に体験してください!我々も皆さんに研究のわくわく感を伝えられるようしっかり準備してお待ちしています。どうぞよろしくお願いいたします。
がん研EEP2023 実行委員長 平尾敦