文部科学省共同利用・共同研究拠点 金沢大学 がん進展制御研究所

　本研究所は、1967年に国立大学附置研究所の中で唯一、「がん研究」に特化した研究所として設置されました。以来、がんに関する基礎から臨床応用まで一貫した研究を展開してきました。私たちの使命は、がんの本質に迫る先端的な基礎研究を推進し、その成果を次世代の診断・治療技術へと昇華させ、がんの克服と健康長寿社会の実現に貢献することです。

　がんは依然として人類の健康を脅かす最大の課題のひとつです。とりわけ、転移や薬剤耐性といった悪性進展は、がん治療の成否を左右する重要な要因であり、その解明と制御は喫緊の課題です。私たちは、ゲノム解析やデータサイエンスを活用した個別化医療の進展を踏まえつつ、がんの悪性化機構に対する根源的理解を目指し、「がん幹細胞」「がん微小環境」「先進的がんモデル」「分子治療標的」などのキーワードを軸に研究組織を編成し、新しい知の統合を目指した基礎研究を展開しています。生命科学の革新が日進月歩で進む現在、ゲノム医療、AIを駆使したデータ駆動型研究、オルガノイドやPDXマウスといった次世代モデル系の確立など、新たな研究パラダイムが台頭しています。私たちは、これら最先端技術の導入によって研究の高度化を図りつつ、異分野連携により研究の多様性を高め、がん研究における知的フロンティアの開拓に挑戦しています。また、分子機構の解明から新たな治療標的の探索まで、トランスレーショナルリサーチを積極的に推進し、基礎から臨床への橋渡しを加速しています。

　本研究所は、文部科学省より「がんの転移と薬剤耐性に関する先導的共同研究拠点」としての認定を継続的に受けており、国内外の卓越した研究者との共同研究を通じて、国際的な研究ネットワークの中核としての役割を担っています。シンガポール、韓国、中国、インド、英国、米国などの世界屈指の研究機関との連携を深めるとともに、所内においても多国籍の研究者や学生が活躍できるグローバルな研究環境を実現しています。加えて、2023年には文部科学省「学際領域展開ハブ形成プログラム」に採択され、「健康寿命の延伸に向けた集合知プラットフォームの形成」プロジェクトを始動しました。本事業では、東北大学加齢医学研究所、大阪大学微生物病研究所、慶應義塾大学先端生命科学研究所と連携し、学問分野を越えた協働によって「健康寿命科学」という新たな学際研究領域の確立を図り、研究成果を社会実装へとつなげる取り組みを推進しています。

　今後とも、本研究所は、中核的ながん研究拠点として、革新と連携を基盤に未来志向の研究活動を展開し、がんの克服と人類の福祉に貢献して参ります。本研究所の研究活動や共同研究拠点活動に対しまして、皆様の一層のご理解とご支援を賜ることが出来ましたら幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

　金沢大学がん進展制御研究所長　鈴木　健之