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「学際展開国際がんシンポジウム」を開催しました (9月25日)

 

学際展開国際がんシンポジウム 開催報告

 

 2025年9月25日(木)に、第84回日本癌学会学術総会において、「学際展開国際がんシンポジウム—宿主状態の改善からがんの克服をめざす:新しいがん悪液質観の確立—(Interdisciplinary International Cancer Symposium: Defeating cancer from a host perspective: cancer cachexia)」が金沢市アートホールにて開催されました。金沢での癌学会学術総会の開催は56年ぶりの機会となり、国内外の多数の研究者が参集しました。本シンポジウムは、金沢大学がん進展制御研究所と文部科学省学際領域展開ハブ形成プログラム「健康寿命科学」(CIMA)の主催により、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)とも連携して、学際的な知の結集を通じて新たな研究領域の創出をめざす取り組みとして実施し、約100名が参加しました。

 シンポジウムでは、河岡慎平先生(東北大学加齢医学研究所)、Hong-Wen Tang先生(DUKE-NUS Medical School, Singapore)、小川晶子先生(東北大学加齢医学研究所)、Christine Chio先生(Columbia University, USA)、高倉伸幸先生(大阪大学微生物病研究所)、平尾敦先生(金沢大学がん進展制御研究所)の6名による研究報告が行われました。いずれのご講演も、宿主側の状態に着目した新しい機序の解明や、早期段階での介入戦略の設計に資する最新の知見を提示し、活発な討論が行われました。

 近年、がん悪液質は「体重減少」だけでは捉えきれない、全身性かつ多臓器・多階層に及ぶ病態として再定義が求められています。臨床的成果の向上には、症状発現前の早期段階での宿主生理の変化を的確に捉え、介入可能性を高める枠組みが必要です。本シンポジウムでは、従来のがん悪液質の概念を捉え直しつつ、早期診断・治療標的化を視野に入れた新しい生物学的・臨床的フレームワークを議論しました。

 本シンポジウムを通じて、悪液質を「その病態を正確に把握し治療介入すべきがんケアの構成要素」として捉え直す機運が一段と高まりつつあることを実感しました。今後は、学際領域展開ハブ形成プログラム「健康寿命科学」を基盤に、国内外研究者とのネットワークをさらに拡充し、定義の再検討、バイオマーカー同定、介入試験デザインなど、基礎研究から社会実装への橋渡しを加速していきます。

 ご登壇・ご参加くださった研究者の方々、企画・運営にご尽力いただきました関係各位に心より御礼申し上げます。

 

2025年9月29日

鈴木 健之

金沢大学がん進展制御研究所・所長