HOME | 研究所からのお知らせ
セミナー・イベント
11月18日(火)、新学術創成研究機構 異分野融合セミナー/がん進展制御研究所セミナーが、学際領域展開ハブ形成プログラム「健康寿命科学」の共催のもと、がん進展制御研究所4階会議室において開催されました。 和歌山県立医科大学薬学部の菱田友昭先生をお招きし、「がん遺伝子 MYC を中心とした幹細胞性に関する研究」と題したご講演を行っていただきました。
ご講演では、ES細胞の多能性制御および消化管腫瘍発生機序に関する最新の研究成果についてご解説いただきました。前半では、ES細胞における多能性維持に必須となる Myc–Max 複合体の機能的重要性について、様々な細胞生物学的アプローチから得られた解析データを交えてご紹介いただきました。Myc–Max 複合体は、細胞増殖を司る転写因子として古くから知られていますが、菱田先生のご研究は、それが多能性ネットワークの安定化に直接関与し、ES細胞特有の代謝状態や転写動態を支えていることを明確に示すものであり、幹細胞基盤研究に大きな示唆を与える内容でした。また、後半では、Salk 研究所でのご経験を踏まえ、胃がんの発生起源に関する先駆的研究をご紹介いただきました。特に、特定の幹細胞集団や分化段階の違いが腫瘍化感受性にどのように影響し、微小環境との相互作用によってがんの進展様式が規定されるのかについて、遺伝学的トレーシング技術を用いた包括的アプローチが示されました。これらの成果は、臓器特異的幹細胞生物学と腫瘍発生研究を架橋するものであり、異分野融合の観点からも極めて示唆に富むものでした。
なお、セミナー主催者である本研究所がん・老化生物学研究分野の城村由和先生と菱田先生は大学院時代の同期であり、若い頃から切磋琢磨してきた間柄とのことで、「本セミナーで改めて先生のご活躍を伺うことができ、当時の写真(図1)を振り返りつつ、研究者としての道の歩みを共有できたことは大変感慨深いものでした」とのコメントをいただきました。
セミナーには、研究所内外の教職員、大学院生等約20名が参加し、活発な質疑応答や意見交換が行われ、多能性制御・がん生物学・幹細胞研究など幅広い分野の研究者にとって有益であり、新たな共同研究の可能性を拓く契機ともなりました。

菱田先生によるご講演の様子

菱田友昭先生

城村由和先生

菱田先生による質疑応答

図1:当時のお写真


