教授
城村 由和
Johmura Yoshikazu
准教授
馬場 智久
Baba Tomohisa
助教
中野 泰博
Nakano Yasuhiro
新学術創成機構若手PI(新学術籍)
特任助教
隈本 宗一郎
Kumamoto Soichiro
個体老化やがんを含めた加齢性疾病発症・進展には、DNA損傷などで誘導されるストレス応答の一つである細胞老化によって生じる不可逆的な細胞増殖停止・生理活性因子の分泌等の特徴を示す細胞、いわゆる『老化細胞』の蓄積が重要であることが明らかになりつつあります(図1)。一方、私たちの最新の研究では、生体内に存在する様々な細胞種が老化細胞になること、それによる機能変容は細胞種ごとによって大きく異なることが分かってきました。つまり、老化細胞の蓄積による加齢性疾病発症・進展を制御する上で、老化細胞の織りなす多様性を分子レベルで理解することが最重要であると考えられます。そこで本研究分野においては、分子生物学・細胞生物学・マウス遺伝学・情報生物学といった様々なアプローチを組みわせることで、生体内の老化細胞の誘導・維持・機能変容の分子メカニズムを解明し、老化細胞の選択的な除去・エピゲノム変換による細胞若返りなどといった革新的な老化細胞制御法の開発を目指します。
がん発症の最も重要なリスクファクターの一つは加齢であり、多くのがんの発症率は加齢とともに増加し、そのパターンは典型的な加齢性疾患のそれらと類似しています。老齢マウスから老化細胞を遺伝子工学的に除去すると発がん率が大きく減少することから、老化細胞の蓄積による組織・臓器の異常やそれに伴う個体老化が加齢に伴う発がん率上昇に深く関与していると考えられます。一方、我々の最新の研究では、がん組織内にも老化細胞が存在し、がん幹細胞の機能維持などに関与することによって、がんの悪性化進展・治療抵抗性の鍵となる可能性を示す結果が得られつつあります。本研究分野では、様々な組織・臓器別のがんモデルと老化細胞可視化・除去マウスなどを組み合わせることで、がん組織及びその周辺組織の老化細胞の全体像を明らかにすることで、個体老化とがんの発症率増加・悪性化進展のメカニズムを解明し、新たながん予防・治療法の開発を目指します(図2)。
図1 老化細胞の織りなす多様な機能
図2 老化細胞制御法に基づく革新的ながん予防・治療法の開発