教授
磯崎 英子
Isozaki Hideko
准教授
酒井 克也
Sakai Katsuya
内因性免疫は、感染症から生体を守るために先天的に細胞に備わっている防御機構です。本来、生体にとって有益な機能ですが、時には過剰に働くことで、がんの発生や進展を助けることがあります。これまでに私たちは、内因性免疫因子の一つであるAPOBEC3Aが、がん細胞の薬剤抵抗性に関与していることを明らかにしてきました。正常細胞においてAPOBEC3Aは、主にウイルス感染時に発現し、ウイルスの遺伝子を変化させることで、その増殖を抑える役割を果たしています。一方、がん細胞においては治療薬によって誘導され、がん遺伝子や染色体に異常を引き起こすことで、治療抵抗性のがん細胞へと変化(進化)させることがわかりました。また、APOBEC3A遺伝子をノックアウトすると、治療抵抗性のがん細胞を減らし、薬剤耐性の獲得を遅延することが確認されました。私たちの研究成果によって、現在、APOBEC3Aをターゲットにした新しい治療薬の開発が期待されています(Isozaki et al. Nature 2023, Villanueva Nat Rev Drug Discov. 2023)。このように、特定の内因性免疫因子が過剰に働くことで、がん細胞のゲノムの不安定性が高まり、がんの発生や進展を促すことがあります。私たちはこの現象を「がんの進化」と呼び、これを理解することで、がんの発生や進行を防ぐ新しい治療法の開発を目指しています。
当研究室では、最新のゲノム解析技術を用いて、がん患者組織および患者由来の細胞株や異種移植マウスを分析し、がんの原因や新しい治療ターゲットを探索しています。また、ゲノム編集技術を活用した治療法の開発に取り組むことで、がん治療の新たな可能性を切り拓くことを目指しています。
Patient derived xenograft mouse model(PDX)、Patient derived cell line mode (PDC)、Organoid
APOBEC3A阻害剤の開発;APOBEC3A発現制御機構の解明およびバイオマーカー、探索がんの進化に関与する遺伝子群の網羅的探索
空間的オミックス解析を用いたがん内因性免疫機構の解明
Base editorによる治療の開発