教授
後藤 典子
Gotoh Noriko
助教
竹内 康人
TAKEUCHI, Yasuto
新学術創成機構若手PI
助教
本宮 綱記
Hongu, Tsunaki
癌と癌幹細胞に注目し、基礎研究から臨床へと連続する研究の展開を目指している。最先端の分子生物学、細胞生物学的手法、さらには最新のバイオインフォマティクスを組み合わせて、癌の早期発見や個々の患者に最適な治療法を選択するための診断マーカーの抽出、そして新しい抗がん剤開発のための新たな分子標的の発見を試み、トランスレーショナルリサーチへと展開している。
乳がん組織内のがん幹細胞集団は,膜タンパク質のニューロピリン1 (NRP1) もしくはInsulin-like growth factor 受容体1 (IGFR1) を用いて濃縮できる。この方法を用いてがん幹細胞を濃縮したのち,シングルセルRNAシークエンスを行ったところ,5つのクラスター(集団)に分かれた。クラスター1および2に分類されたがん幹細胞は,乳がんの発生母地とされる乳腺前駆細胞とよく似た性質を示していたため,「祖先がん幹細胞」と名づけた (図)。この祖先がん幹細胞は膜タンパク質FXYD3に対する抗体を用いて取り出すことができ,抗がん剤に対して最も治療抵抗性を示すDrug tolerant persisters (DTPs) であった。FYXD3は, 細胞膜上にあるNa-Kポンプの機能を保護する。Na-Kポンプ阻害剤である強心配糖体は,祖先がん幹細胞であるDTPsを死滅させられる。古くから心不全に用いられてきた強心配糖体が,乳がん再発を防げることが示された。